2023/09/26 20:37

先日入荷したものの中で一際女性客に人気の三ッ鉢丼。
こちらは明治期の一部『印判』で作られております。
印判とは俗にハンコとの解釈がされておりますが、ほぼ間違いございません。

江戸時代までは手描きで一つ一つの器に独特な筆遣いの跡を感じ取れる作風が多く、それらを『味わい』として日本古来から愛されてきました。
明治期に入りますと海外への輸出量も増え生産性を重要視した所謂、大量生産品の製造に力を入れるようになります。
この時期に多く作られていたのが『印判』とされており、現代でもその作風を継承して多くの器が生産されております。
しかし印判の初期とされる明治期の作風は、まだ完璧とは云えない歪みや擦れ具合が見受けられます。

印判微塵花唐草蕎麦猪口=¥4,000.-
当店に現在ある商品で御案内致します。
こちらの蕎麦猪口は明治期の印判ですが、この頃から呉須(ごす)は日本産の藍色ではなく西洋から輸入された酸化コバルトを用いて作られるようになり、江戸期の呉須の藍色とは異なり色彩的に濃くハッキリとした色調に変化致します。
(この辺は伊万里をお買い上げ頂いた方には必ず御案内申し上げておりますが今一度おさらいを云う事で…)
蕎麦猪口の中央から右に少しズレた所に絵柄が重なるような線が見えるかと思います。
骨董初心者の方は「手描きと印判の違いが解らない」と仰る方もおります。
印判は、このように重なるような絵柄があるものが多く、こちらを手がかりにされても良いかと思います。

印判蕎麦猪口¥2,800.-
こちらは印判の中でも西洋の文化を意識した紋様が細かく彫られております。
絵柄も時代背景が映し出されるものですが、なかなか手の込んだ仕上がりです。

側面に至っても手抜きが無く、唐草文様も随分と変化を遂げております。
高台の上から伸びる櫛高台の絵柄も白抜きを用いて表現されており、なかなか洒落てます。

印判大鉢¥2,000.-
こちらは印判を朱で押した後に手描きで赤や緑、黄色等を塗り絵風に刺し色をして描いております。
こちらは大正期に入る頃かと思われます。
着物の柄等から大正ロマンが流行った日本国内の風景が見受けられます。

こちらは一番始めに画像案内しました三ッ鉢丼の見込み部分です。
古から伝わる松竹梅の紋様も印判でハッキリと表現されております。
松竹梅のそれぞれに刺し色として金があしらわれております。
角度により輝く金色が燻し金となっており上品な出来です。

外側の紋様も時代背景が良くわかる部分ではございますが、こちらは鍋島に良く見られる宝づくしの紋様が押されております。
手描きとの調和がとれた品格のある印判ですね。

今までは「え~?印判?」と軽くあしらわれておりました。
安い、新しい、たくさん現存するという意味合いでは当店も10年前は数百円で販売した事もございます。
価格は印判の出来に対して付けておりますが、最近では印判のコレクターが急増しており海外からも問合せがくる程の変化を感じており少々困惑気味でおります。

確かに可愛らしいものや印判の特徴を引き立てる作風が見受けられるものは「凄いな~。考えたな~。」と感心も致しておりましたが、ここまで急激に人気が出てくるとは…。。。

10年前に当店で印判をお買い求めになられた方は「ビックリしたよ。ここで買ったものと同じようなものが数千円になってた」とか「オマケでくれた印判だけど、アレ、ちょっと値上がってきていない?」等とお声掛けされては「そうなんだよね~」と笑っております。

定番の藍色の印判は滅多に入荷しませんでしたが(私が朱色の印判好きって理由もございます)今後は幅を広げて(視野を広げて)印判の入荷も率先して参ろうかと思案中です。

都内の顧客様からは数年前から「印判は、もっと値上げした方がいいよ」と常々云われておりました。
そろそろ…そんな時期なのかな~?と。

確かに、この10年で骨董、古美術殿堂入りした商品群もございます。
明治~大正期の商品。
コレクターの方はお早めに御検討下さい。
ウチもそろそろ印判入荷のお知らせが始まりそうです。