2023/09/26 20:41

おまけ記事

 

前の記事に鼈甲、象牙にも似たような疑問点が多いと記載しました。

 

こちらの2点に関しましては、現在は動物保護により新たに生産する事を禁じられております。

勿論、現在も鼈甲を用いて簪や櫛を作成される職人もおられます。

皆様、限られた材料の中での制作だと把握しております。

 

さて、鼈甲の本物、偽物。

ベークライトと言う単語をご存知の方も少なくなりました。

世代的にも店主の私もベークライトで盛り上がりをみせた年代ではございませんが、職業柄遭遇する機会が多く、其の単語さえ現代社会では当たり前のように存在している事から記憶される必要性もなくなりました。

 

このベークライトとはフェノールとホルムアルヘヒドを原料とした熱硬化性樹脂で植物性の樹脂ではなく人工的に作られたプラスチックと言う、、、なんとも古美術の分野とは異なるお話になる訳でございます。

 

このベークライトは現在の80〜90、100代の方々でしたら詳しくご存知です。

むしろ、当時は画期的な素材とも言えます。

ベークライトが開発されたのが1900年代に入り間も無くである事から(詳しくは1910年頃)人工的に生産可能となり価格も安く手頃な生産品が多く作られるようになります。

 

なぜ古美術商がベークライトの話をするのか?と申しますと、古美術、骨董分野で必ず目にする鼈甲の簪や櫛は、上記の年代以降、鼈甲からベークライト製品として世に多く出回りました。

 

先ほど、現在の80〜90代の方々と申し上げたのは、この世代の方々が主に購入される時に、今までは簪、櫛と言えば、鼈甲や柘植など、素材は天然のものに限られていた中で、新たに加わる事になったベークライトと言う素材を意識して購入されていた世代でもあります。

 

現在の私たちが前のコラムに記載した「電子レンジや食洗機でも使える漆風のお椀」を、これは漆ですか?プラスチックですか?と素材をチェックするのと同じように、ベークライトの誕生により、櫛、簪の素材への意識が日本には加わりました。

 

店主の私の言葉でお話を進行しておりますので、ベークライト専門の方々にはアバウトな表現かと思いますが、お許しを。

 

「鼈甲の櫛、簪って本物なの?」と聞かれる方は鼈甲=プラスチックか、他の何か?程度の場合が多く、

 

「この鼈甲はベークライト?」と聞かれる方は、上記の年代の方か同業者の方で経験の浅い方です。

 

見分け方としましては、陶磁器、漆器と同じように数多く手にして見ていると理解できるようになりますが、ほとんどの方が鼈甲とベークライトの見分け方がわかりません。

 

*ここで確認『鼈甲』とは熱帯の海にいる亀!お腹と背中の甲羅を構成する。。。。。詳しくはお調べ下さい『甲羅』と覚えてくださっても構いません。素材は亀さんです。だから動物保護のお話が出てくる訳であります(この辺りは古美術にご関心ございましたらお調べ下さい)

 

「骨董市に行くと必ず鼈甲の簪を買います」と自慢げに簪を見てせ仰る方がおりました。

しかし、彼女はベークライトと言う素材を知らなかったご様子で、後からきた80代の女性から「鼈甲じゃないんじゃない?これが鼈甲よ」と、当店で購入された鼈甲のアクセサリーを差し出されて「ね?あなたのとは、ちょっと違うでしょ」との会話が永遠続きました。

 

簪を見せた方にはベークライトという素材がある事を告げると「え?違うの?」と驚いておりました。

 

昔の古美術、骨董商の中には見分けがつかなければ、線香の先で焼け!と荒手な方法で区別する方もおりました。

 

一見、このベークライトは鼈甲のそのものの雰囲気を纏っております。

 

しかし、天然物である鼈甲の質感とは異なる艶やかさがございます。

鼈甲の落ち着いた艶とは異なり、ベークライト製のものは輝きがそのまま変化しません。

 

もちろん、素材を一括りにプラスチックと申し上げても間違いではありません。

ベークライトもプラスチック製品です。

 

この見分け方としましては、線香の先で焼いてみる方法もございますが、当店ではなるべく素材を見て、手で触れて覚える事をお願いしております。

 

鼈甲の艶と輝きは時代ごとに変化しますし、素材の質感、紋様からも価格が異なります。

 

しかし、当店でも新たに自然素材を用いての生産は好ましくは考えておりませんので、今後はベークライトに限らず、代理できる素材の生産が可能であれば、そちらを推薦したいと思います。

 

ただし、当店ではあくまでも古美術商で取り扱うものですので、鼈甲でしたら本物の素材を用いた『鼈甲』を販売致します。

ベークライト製品の買取は行っておりませんので、ご注意下さい。

 

 

象牙

 

こちらも漢字のままです。

 

お鼻の長い象さんの『牙』です。

 

時々、骨と勘違いされておられる方がおりますが、骨ではなくキバです。

 

こちらの素材の偽物として業界で言われているのは練り物(ねりもの)

 

根付を収集されておられる方は避けては通れないのが、この練り物と象牙の見分け方。

 

当店では象牙をお見せしながら、模様のような筋状なもの(縞目)がある事を確認して頂いた上で、この筋状がない場合や、何故ここで筋(縞目)が途切れているのか?とか、不自然な方向に伸びているものがございます。

これらが練り物と称されるもので、象牙製品ではないと判断ができます。

 

練り物の場合も質感で、なんとな〜く理解できてきますが、実に巧妙な技術で作られているものも多く、その場合は色で判断します。

 

古美術商の店頭に並ぶものは古いものが基本です。

 

象牙は時代毎に飴色のような茶系に変色します。

 

彫が施されているものは、その彫った部分にも時代が見て取れます。

 

象牙色の肌と言う言葉は乳白色を思い浮かべますが、実は時代を経て行くと飴色に変色する事から、古美術商の店頭で不自然なまでに乳白色が美しい場合は少々、、、お考えになってから商談して下さい。これ以上は、個々人の価値観ですので、購入されるか、しないのかは、、、お任せ致します。

 

象牙そのものの置物がございますね。

当店でも何度か扱いました。

これも、実はコラムに記載する事を長年ためらっておりましたが、本物、偽物の見分け方を、、、公開します。

 

象牙の形状がそのままの多くは、そこに彫り物がある場合がございます。

勿論、素材無垢のままも存在します。

 

この場合は、上記に記載した筋状云々、飴色云々、、、は、勿論、必見です。

しかし、外側は本物の素材を使用している事がほとんどです。

 

どう言う事かと申しますと、中が問題です。

 

。。。。。

 

 

続きは、実際に実物の取り扱いがある時に店頭でお話します。

 

これ以上記載しますと、色々と悪い事をされておられる方々の営業妨害に繋がりますので^^;

 

 

 

美術品、絵画も同じですが、素材に注目しますと真実が見えて参ります。

 

*これ以上、象さんに危害を加えるな!とも叫んでおきます。当店では極力、象牙のものは今後扱わない方針ですが、印籠についた根付や小箱やその他諸々に施された時代物の象牙はご勘弁、ご理解頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。もう、象牙製品は現代社会で生産するのは反対です。