2023/09/26 21:24

こちらの李朝の徳利。
当店に来た時から口が欠けておりました。
見覚えのある方も多いかと思います。


通常はお買い上げ頂いた方に修理をされるか御相談をしてから修理をするのですが、今回は私と修復師の方で相談しながら李朝徳利の雰囲気を壊さぬように…と言う方向で、金では無く、敢えて漆のみで色調も調和の取れる配合でお願いしました。

金継に出したい!と全国各地から御依頼を頂いておりますが、まずは修理品の特徴と風合いを観察してから、金は燻し金にするか?とか、銀で直してみた方が使い込む事により黒に近づくから銀継にしましょう!とか、今回のように漆のみで土と調和が取れるようにしてみよう。等と打ち合わせをしてから取りかかります。
古伊万里や九谷、薩摩等は概ね修復師も数をこなしておりますので、こちらは御任せされた方が想像以上のものが仕上がって参ります。

漆器類や仏像も手掛けて下さる貴重な修復師ですが、表には撤して御名前も公表されない方である為、日本の職人気質を強く感じさせる方でございます。

ですので、当店のホームページ上でも御紹介をお願いした事も多々ございますが、上記のような理由で御名前は公表出来ません。

とても朗らかな方で、御任せした仕事はいつも期待以上の結果を出して下さいます。
以前、仏像の修復をお願いされた方も感動のあまり弟子入り志願を申されておりました。

語弊があるかもしれませんが、下手な金継は1年もしたら剥がれる事がございます。
こちらの修復師の修理は評判が良くリピートの方がほとんどです。

ただ、気を付けて頂きたい事がいくつかございます。
あまりにも修復するに価しないものの場合は店頭で私の方からお断りさせて頂いております。

研師も修復師も気の優しい方ですので、どのようなものも手掛けます!と仰って頂いておりますが、店主である私の方で「これは御勘弁下さい」という場合もございます。

修理の御相談は真剣にお受けしますので、あまりふざけたものは持ち込まないで下さい。

話を戻します。
今朝、李朝の徳利の修理が上がってきました。
御覧下さい。

一見、ほとんどの方が、どこに直しの跡があるのか、眼を凝らさないとわからない程の出来栄です。
大きく三角に欠けていた部分も下地に古い金粉を塗り更に漆を塗り重ねて通常の徳利の形状にまで修復して下さいました。
深みのある素材感が見受けられます。
これならば御使用するにあたり、使い心地が悪い等と言うことは、まず無いと思います。
何よりも全体の雰囲気が整い本来の李朝の良さを感じさせます。

横から御覧頂いても、ほとんどわからないかと思います。
修理の跡がある物に関しては、当店では必ず「ここに修理した形跡がみられます」と御案内してからの販売をしております。
こちらも、念押しして修理の跡を御覧頂く事になるかと思います。

今の時代「アロン○ルファでくっつけちゃった」と仰る方も多いのですが、それでは物の価値が台無しになります。
古美術、骨董品の修理は専門家に御任せ下さい。

刀の研ぎも同じです。
たまに「クレンザーで磨いた」と堂々と威張る方がおります。
呆気にとられて、それ以上の会話をする事はなくなります。

所有された事の歴史的責任を御存知の方でしたら、きちんと物に対しての対処方法を選んで下さいます。

作り手が、もし、目の前におられたら複雑な気持ちになるかと思います。

美術品の修復とは、その時代で受持つには力不足であるという認識があるか無いかで決まるような気が致します。

「僕に修理任せて下さい」
と堂々と名乗り出る方には御任せしておりません。

そこが当店の拘りでもございます。

「これでいい?」
と、互いの感性を探り合うように物に対しての敬意がある方のみが当店の修復師であり、研師であり、美術家でございます。

言うまでもなく腕は確かな方しかお取り引き致しません。

納得のいく修理をおのぞみでしたら、一度、御来店下さい。

李朝徳利、店頭で販売致します。
是非、御覧下さい。

*完売